Episode XX 『サプライズド・トラップ』

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「バカもん!!」
「ヒッ…」
ボスの怒鳴り声にびびっているのは、バン。

「お前、今日で3日連続遅刻だぞ…刑事として…それ以前に、一社会人としての自覚がないのか!」
「…すいません…」
「…もういい、席に戻れ。」
「はい…」

しょんぼりと席に座る。いつものバンならこの時点で叱られたことを反省という名の記憶消去で
いつものバンに戻るのだが、ここ2、3日のバンは、ずっと一日中、
ため息をついたり。ぼーっとしてたり。そして、遅刻。

そして今日も、元気が無い。
そんな様子を見かねた、ウメコがボスにこう言った。
「ボス…そんなに怒らなくてもいいじゃないですか…。バンだって、いろいろあったんだし…」

ボスが答えるかと思ったら、バンとウメコのお目付け役?であるホージーが我先にと、
「甘いぞウメコ。仕事に私情を挟むのはもってのほかだ。お前だってわかってるだろう?」
「…わかってるけど、だって…」
「ウメコ。ホージーの言うことは正しいよ。」
「そうよ。ウメコ。そのうちバンだって元気になるから…」
「心配なんてナンセンス!」

他のみんなに結局正論を突きつけられ、
「はーい…」と答えるしかなかった。
そして、そんな中でも、バンだけは1人、やっぱりぼーっとしている。

「もう、なんであんな手紙よこすのよ…マリーさんの…バカ!」
ウメコは遥か遠くの宇宙の彼方にいる相手に心の中で八つ当たりすることしか出来なかった。

時は遡り、1週間前。
デカルームで報告書を作っていたバンは、突然ボスに呼ばれた。
「バン、ちょっとこっち来い」
「なんすか?ボス」
「これ、お前宛てに来ていた手紙だ」
と言ってバンに手渡した。
宇宙共通語で書かれた、一通の封筒。

「…誰からだろ」
封を破って、開けてみる。
「…マリーさんからだ!」
 手紙の主は、レスリー星のスペシャルポリス、マリー・ゴールドから。
マリーは、レスリー星から宇宙マフィア、ガスドリンカーズを追って、地球に潜入捜査に来ていた。
その中で出会ったバンと恋に落ち、事件解決後、マリーはそのままレスリー星に帰っていった。
…バンの頬に恋の証を残して。

「「「「「ええー!」」」」」
一同が驚く中、まっさきに手紙の内容に飛びついてきたのは、ウメコ。
「ねえねえ、何て書いてあるの?読んで読んで!」
「なんでウメコに教えなきゃいけないんだよー。これは!俺の個人的な、手紙なんだからな!」
「ぶー!バンのケチ!」
「何とでも言ってくれ!…えーと…何々?」

 バンは教えないと言いながらも、声を出して読み上げ始めた。これでは何の意味も無い。
一同は(やっぱりバンだね…)と思いながら、手紙の内容に耳を傾ける。
「えーと…”バンへ、突然の手紙でごめんなさいね。この前はいろいろとお世話になりました。実は、大事な報告があります。
実は、私マリー・ゴールドは、この度、トジャビッ星人ダーロクと結婚…しました”…って…嘘だろ…なんでだよ…?」

バタン。バンはそのまま、ショックのあまり気絶してしまった。

 その後、意地悪な先輩4名と後輩と呼ばれる上司1名によって手紙の全てが明らかにされたのは言うまでも無い。
―自分の故郷、レスリー星をガスドリンカーズによって廃墟にされたマリーは、潜入捜査の為、地球に訪れて、
事件解決後、レスリー星の修復作業の為に故郷へ帰った。
 もちろん1人だけじゃ修復作業は出来ないので、宇宙警察が全宇宙に公募したボランティアと共に
修復作業を行うことになり、その中で出会ったのがボランティアとして派遣されてきた、トジャビッ星人ダーロクであった。
 どうやらダーロクがマリーに一目惚れしたらしく、ダーロクの愛をマリーが受け入れたのはそう時間がかからなかったようだ。
…たった3ヶ月。そして挙式はもう済ませ、披露宴は行わないとの旨。そして最後に「バンも早く、幸せになってね」で手紙は
〆られていた―

 そんなこんなでこの3日間、バンは思いっきり落ち込んでいる。
ザムザ星人マイラに嘘つき呼ばわりされた時以来の落ち込みっぷり。
 しかし、何日間もかけて落ち込むバンを誰も見たことがない。
この3日間、アリエナイザーは出現していないのでよかったものの、仕事にも支障が出ている。

 …というわけで、ウメコはマリーに当たらずにはいられなかった。
 マリーと一緒にお風呂へ入り、マリーのバンへの気持ちを確かめた自分としては、
どうしてあんなに早いうちに気が変わるものかと、腹が立ってしょうがなかった。
 (あたし、マリーさんなら許せるって思ってたのに…)

 実は、ホージーからして「銀河一の金庫破り」と言わしめるほどのバン。
そんなバンが一番最初に「ハートの鍵を開けた」のは、ファラウェイでも、
マリーでもなく、なんとこのウメコだったのだ。
 バンが地球署に配属され、最初のうちはこの無鉄砲な新人に対して、あまりいい印象を持たなかった。
それが一転して、変わったのは、ドン・モヤイダを追い詰めたあの瞬間。
 「熱いところも、あるんだ」
 そんな理由で、バンに惹かれてしまった、ウメコ。

しかし、当のバンにはそんな自覚は微塵もなく、いつもケーキの取り合いや、「チビチビー」とからかったり、ケンカばかりの毎日。
おまけにそんな中、バンは、張り込みの最中に、マイラに惚れて結局フラれてしまったり、イーガロイドから助けた、ファラウェイに求愛されるわ、
レスリー星のSP、マリーに惚れてしまうわ、幼体だったヤーコのハートの火をつけてしまったり…仕事と連動して、恋愛には事欠かない日々。

 ウメコにとって気の休まる日はない。
そんな日々も最近、やっと落ち着いたかと思ったら、今度はマリーからの、手紙。

そんなウメコの相談相手…と言う名の八つ当たられ係は、ジャスミンとセンであった。

ジャスミン曰く、
「そんなに気が休まらないんだったら、諦めればいいのに」
「だって…それでも、好きなんだもん…」
ジャスミンにはアッサリと諦めろと言われ続けている。
「じゃあ、”女は男の港”だと思って我慢し続けることね。若しくはドーンとコク(告)って見よう!ドーンドーン!」
(…まだ港にも辿り着いていないけど…ウメコのことだから意味わかってないだろうなあ)
(女は男の港?…よくわかんないよジャスミン…)

「あーあ、どうしたら、いいのかなー?」
 ウメコはため息をつく。
(なんとかバンには元気になってもらいたいんだけど)
 ここはマシンブル。パトロールの真っ只中。
「ねえ、どうしたらいいと思う?センさん!」
運転席にいたセンは、話のまったく見えない質問に、
「ウメコ…何をどうしたらいいのか、まずそこから話してくれないと困るんだけどなー」
(ジャスミンはいつもこんな調子で話聞かされてるのか…大変だねえ…)


「んー、最近バンが元気ないでしょ?…マリーさんのことで、多分落ち込んでるんだろうけど、
こんなにも落ち込み続くのもなんか心配で…どうやったら、バンが元気になれるか、考えてるんだけど…」

「うーん、それは困った問題だね…俺もボスの雷はあんまり好きじゃないし」
(やっぱり予想通りだった…バンとウメコはわかりやすくて、いいねえ…)

「そうでしょ?センさんもそう思うでしょ?…ねえ、なんかいい方法ない?センさん?」
あまりのウメコの必死さにセンは少々驚きながらも、
「わかった、わかった。いい方法、考えてあげるから、ちょっと待ってて」
(ウメコ、バンのことそんなに好きなんだね、健気だね…)

 港の倉庫付近に着いたマシンブルを止め、センは外に出て、壁のあるところを見つけた。
「よっこらせ」
―これは、センのシンキング・ポーズである。これをすることによって、何かがひらめくのだ。―
…3分後…

「わかったよ、ウメコ。いい方法、思いついたよ。」
「本当!?何々?早く教えてセンさん!」
「それはね…」



 それから、一週間後の夜。勤務も終わり、夕食も終わった時間。
ウメコは、バンの部屋の前に、立っていた。
(本当に、こんな方法で、元気付けられるのかな?)
実は、ウメコは、「マリーの姿」に変装していたのだ。

 SPライセンス転送モードから、レスリー星のSPの女性隊員服を転送して。
センがこっそりスワンさんに頼んで、マリーの2丁拳銃、D−スマッシャーの偽物を作ってもらい、腰に装着。
化粧もカツラも準備して。どこからどう見ても、マリーにしか見えない。…身長だけ除いては。

「身長でバレちゃう、これじゃ、意味ないよお」
「じゃあ、これ。」
とセンに手渡されたものは、1本のワイン。
「もしバレそうになったら、これを飲ませるといいよ…それに、俺たちが先回りして、ちょっとお酒飲ませるから、
心配しなくていいよ。そうすりゃ、身長のことなんか、気にしなくなるって。バン、ああ見えてもけっこう酒弱いし」
「…センさん、すごーく有難いんだけど、なんでそこまでセッティング、してくれるの?」
「そりゃー、ウメコの頼みだからねえー」(ちょっと小細工させてもらったけど…)

(なんか、緊張するなあ…そういえば、あたし、バン…じゃなくて、男の人の部屋に入るのって、初めてかも。
バンの部屋って、なんか汚そうなイメージがあるんだけど…どうなんだろ…)
「よーし!ウメコちゃん、良い子、強い子、元気な子!行くぞ!」
と呟きにもならない声を出して、ドアを3回、ノックした。

 ドアが開く。バンが出てきた。半袖のSPD服を着た格好。
「…はい…って、あれ!?マリー!?どうして…?」
「久しぶり…地球署に寄ったついでにバンに、会いたくて…」
ドアの後ろから、がやがやと声が聞こえてきた。
「ホワッツハプン?!…マリーさん!なんでこんな奴の部屋なんか…」
「こんな奴って言うな!相棒!」
「相棒って言うな!…マリーさん、こんな奴の部屋じゃなくて、VIPルームへご案内しますよ…」
ホージーは大分酒が回っているらしく、マリーだと信じてやまないようだ。
続いてテツが出てきた。
「あれー?マリーさんお久しぶりです…って、なんか、小さくなっ」
「なってない、なってない。さ、俺たちもう帰ろうよ。2人の邪魔するのも悪いし。」
(がんばれよ、ウメコ)
センは、ウメコに向かってウインクしながら、テツの口を塞ぎ、ホージーを無理矢理引っ張りながら、
「じゃあ、バン。また明日ー」
と言って、部屋から出て行った。

ドア越しに、2人が向かい合う。
「マリー…会いたかったんだ。話がしたくて…」
「あたしも、バンに会いたかった…」(毎日、会ってるけどね)
「部屋、汚いかもしれないけど、入って」
「うん…」(どんな部屋なんだろ)

部屋に入ると、…イメージしてたよりもけっこう小奇麗な部屋。
隣は寝室。あまり余計な物は置いていない。漫画が、あちこちにちらばっているだけ。
(けっこう綺麗にしてるんだ…なんか意外だあ)

どうぞと言われてテーブルの椅子に腰掛ける。バンが、話を持ち出した。
「・・・手紙…読んだぜ。結婚、するんだってな…」
ウメコはこくりとうなづく。(あんまりしゃべると、あたしだってばれちゃうもんね…)

「俺…手紙、読んだ時は、すっげーショックだったけど…でも!俺はマリーが幸せだったら、それでいいから!」
あんなに落ち込んでいたのに、今は笑顔で祝福しようとしている。
「バン…」
「幸せに、なってくれよな、マリー」(バン…無理しなくていいのに…)

思わず涙がポロポロポロポロ。流れてきた。
バンがこんなにマリーのことを真剣に思っていたなんて。
(本当は元気無い癖に、無理ばっかしちゃって…バカなバン…でも、そんなバンが…大好き。)

「バン…」
ウメコは立ち上がって、バンを抱きしめる。
(マリーの姿じゃなかったら、いいのになあ…でも、幸せ…。ミーメの夢の中以来だよ。
バンを抱きしめるの…でも、あれからバン死んじゃったけど…)
「マリー…」
バンもぎゅっとマリーの姿をしたウメコを、抱きしめた…と思ったら。
「なんかマリー、身長こんなに低かったっけ?」
「え?そんなこと、ないわよ」
「そうかなあ…もっと身長高かったと思ったけど…」
(あーんダメ!もうバレちゃうよ…)

身長を確かめようと、バンがウメコの頭を抑えたその時。
ポロリ。
(ああん、もうバレちゃったよー!)
カツラが落ち、ウメコ独特の栗色の髪の毛が露になった。

「おまえ…もしかして・・・」
(もう、叱られてもいいや!しょうがない!)
手元にこそっと持っていた、いつものヘアゴムを出して、髪の毛を括る。

「やっぱりウメコか!」
「…ごめんなさい!」
「ったく、いきなりセンちゃんが相棒やテツ連れて呑みに来たよーなんて言うからなんか変だと思ってたんだよ!」
「だってだって、バンがずっと元気なかったんだもん…」
「だからって、なんでマリーに変装するんだよ…反則だろそんなの」
最後の言葉で、ウメコはキレた。

「…バンのバカ!」
思わず、バンの頬をひっぱたいていた。
「痛って…」
「バカバカバカバカ!何よ!フラれたくらいで落ち込んじゃって!
…あたしなんか、いっつも誰かさんが惚れたり惚れられたりするの、目の当たりにしてるって言うのに…」
「…ウメコ」
ポロポロポロっと、涙がまた流れ落ちてきた。
「…そんなことで落ち込んでるバンなんか、大っ嫌い!」
と吐き捨て、部屋を出ようとした。

「待てよウメコ」「何よ。もう出てって欲しいんでしょ…」
「待てって」「ごめんね。じゃあ、おやすみなさい!」
「待てって言ってるだろ!」
部屋を出て行こうとした、ウメコの後ろから。
ぎゅっと、バンの手が伸びて、ウメコを抱きしめた。

「バン…?」
「…ごめん。…さっきの反則って言葉、取り消すよ…」
いつものバンの声とは、違う。バンは静かに話し続けた。

「俺…マリーのこと。多分、本気じゃなかったんだ…。
本気だったら、俺、SP辞めて、レスリー星へ行ってた。それが出来なかった時点で、俺はマリーのこと…」
そして、それ以上黙り込んだ。
その代わり、ますますウメコを抱きしめる力が、強くなってくる。
「バン…」

手を離して、ウメコと正面向かいになった、バンはニヤッと笑い、
「…それに、最初ッからバレバレだったんだぜ。こーんなにちっちゃいマリーがいるわけないもんな。
必死で変装したウメコが可哀相だったから、騙されてやったんだよ。」
「ぶー!ちっちゃくないもん!バンのバカ…」
「…やっぱりそういうときのほうが、ウメコらしいな」
「え?」
「俺。手紙もらってから、ずっと落ち込んでただろ?…センちゃんが、俺に話してくれたんだ…
 『近くにいるバンを心配してくれる人だっているんだから、その人のこと、もっと大切にしてあげなよ』って。
俺、それから、ずっと考えてたんだ。…ウメコだろ?」
「センさんが…」(センさん、そんなこと、言ってくれたんだ…)
「ありがとな、ウメコ。俺…鈍感でごめんな。」
くしゃっとウメコの髪の毛を触った。
「バン…」
ウメコはバンの胸に、抱きついて、泣いた。
嬉しくて、嬉しくて。
バンは黙って、ずっとウメコが泣き止むまで、抱きしめてくれていた。


「…落ち着いたか?」「うん」
SPライセンスで、元の自分の隊員服にチェンジして、元ののウメコに戻った。
「やっぱり、ウメコはその格好の方がいいな。」
「そ、そう?」(へへー、照れちゃうなあ…)


「ちょっと腹減ったし、なんか食うか?…さっきセンちゃんたちがお菓子、持って来てくれたからまだ余ってるし」
「ほんとー?!お菓子食べる食べる!」
「…あれ、何だ?」
テーブルの上に置いたままの、センからもらったワインに気付いたバンは、ウメコに尋ねた。
「ワイン…。なんか手ぶらでやってくるのも変でしょ?」
「ふーん、ワイン飲んだことなくてさ。俺、もらっちゃおうかな」
「うん、いいよ!」

そして。ウメコはお菓子。バンはワイン。
「「いっただきまーす!」」
「うわー、これ、すっげー上手いじゃん。何処で仕入れたんだ?」
「センさんから、もらったの。けっこう有名なメーカーなんだって。」(どこのメーカーかは、わかんないけど…)

そう言いながら、ウメコはお菓子にぱくつく。
「うわーん。美味しーい!やっぱりお菓子が一番!」
「そーか?俺、お菓子より焼肉の方が好きだけどなー」
「何それ!バンなんかいっつもケーキ横取りするくせに」
「お前だって、シュークリームシュークリーム、うるさいじゃないか!」
「何よー!」「何をー!」
また2人の睨み合いが始まるかと思ったら。
「「…なーんてね」」
お互いに、笑いながら再びウメコはお菓子、バンはワインに手を付け始めた。
そんなこんなで、談笑しているうちに。



突然。バンに異変が起きた。

ドクン。
心臓の鼓動が、高くなる。
ドクン。ドクン。
(体中が、熱い。火照ってきたのかな?ワイン飲んだだけなのに…)
ドクン、ドクン。
(俺、なんか、やばいかも…)
「ごめん、ちょっと…隣の部屋に行って来る…」
「え?なんでー?」
それだけ言い残して、バンは隣の寝室へ、移った。
パタン。
ドアを閉める音。
「ねえ…なんか、あったの?…ま、いいか、お菓子食べちゃおっ」
そのままウメコは気にもせず、お菓子に飛びついた。
(ちょっと待ってたら、すぐに戻ってくるよね。)

その頃。隣の部屋のバンは…部屋の電気も点けずに、部屋の隅に、うずくまっていた。
(…だめだ…なんでこんな時に限って…畜生…)
うわーっと頭を掻いて。拳を握り締める。
息が荒くなり、鼓動が、激しくなる。そして…逆らえない「欲望」。

実は、センがウメコに渡したワインは「催淫剤入りワイン」。
バンは薬のせいで、「欲望」に取り付かれてしまったのだった。
どうしようもなく、ウメコに、キスをしたい。触りたい。…ひとつになりたい。
そういう思いが、バンの頭の中でぐるぐると回り続けている。
バン自身は望んでいないのに、薬のせいで次から次へと、沸いて出てくる。
そして。体の方も欲望には逆らえずに…。

拳を握り締める力が強くなる。こうでもしなきゃ、まともな精神を保てない…
でも、そんなのも今だけ。我慢が利かなくなるのも、時間の問題。
「どうしたらいいんだよ…ウメコ…」
このまま時間を過ぎたら治るのか、それすらもわからずに。
バンはそのまま壁にうずくまり続けた。

―その頃、センとジャスミンは、デカルームにいた。
 自分たちの考えた企画がどう動くか気になって、しょうがなかったのだ。
この企画は元々2人が考えたもの。ただし、ジャスミンは「ワイン」のことは、知らなかった。
「ウメコ達、大丈夫かしら…」
「いい加減、2人とも素直になってもいい頃なんだよ。それが出来なければ…
…無理矢理”既成事実”を作った方がいいと思うんだよねえ〜」
ジャスミンは、それを聞いて、呆れたように。
「…センちゃん、何か変なことしたでしょ…」
「まあ、明日になれば、わかるよ」(俺ってやっぱり悪趣味だと思われてるよな…)
「センちゃんって、悪趣味」(自覚があるだけに、怖いのよ、センちゃんは…)
「そう言われると、思ってたよ」―

隣の部屋にバンが移ってから10分が過ぎた。全然戻ってくる気配がない。
「いやーん、お菓子食べつくしちゃった!…って、バン全然戻ってこないよ…」
隣の部屋のドアをノックして、バンに、声を掛ける。
「バン…いつ戻ってくるの?…開けるよー?」
と、ウメコがドアに手をかけようとした、その時。
「開けるな!」
ビクッと、ウメコの手が止まった。
「バン?」
ドア越しから、絞り出すような声で、バンが話し続けた。
「…ウメコ…悪りぃ…、今日はもう、帰ってくれ…」
「えー?なんでー?」
突然そんなこと言われても、まったく納得がいくわけがない。
「駄目なんだ…ごめん…」
「…なんで?駄目って何?いきなり帰ってくれって言われても、納得いかないよ…
…理由教えてくれなきゃ、帰らない!」(ええい、無理矢理開けちゃえ!)

バタンと、ドアを開けた。
部屋は真っ暗。ぱっと見では、何処にいるのか、わからない。
「バン?どこ?」 


「こっち…来るな…」
「バン…」
部屋の隅で、顔を埋めて、座り込んでいるバンを、見つけた。

「どうしたの…?体の調子、悪いの?」
「…」
沈黙が流れる。その、沈黙を破ったのは、バン。
「俺…自分を制御する自信が今、無いんだよ…だから、頼む…今日は、帰ってくれ」
「何それ…意味わかんないよ…制御するって」「だったら!」
「え?」
「俺がお前を今から犯しても、いいって言うんだな…!」
「バン…」(今、「犯す」…って言ったよね…)
ウメコは一瞬、青ざめた。
バンの口から…だけじゃなく、男の人からそんな言葉を聞くのも、生まれて初めてだった。
「今の俺に、近寄らないでくれ…本当に、何するか…わからない…だから…」
(…まさか!)

リビングに戻り、センからもらったワインをよく見ると…瓶の底に、
”ハクタク堂”のロゴシールが貼ってあった。瓶口から匂いも嗅いでみた。
(これ、ワインじゃないじゃない!…センさん…!)
やっとウメコが気が付いた。一旦バンの部屋から出て、廊下からSPライセンスで、センを呼び出す。
『おー、ウメコ。どう?調子は』
「どう、じゃないでしょ!何よあのワイン!瓶底に、ハクタク堂って書いてあるじゃない!」
『あー…シール取るの忘れてた…俺としたことが』
「バンの様子が変なの!どんな薬が入ってたの?」
『催淫剤』
「へ」

『”さいいんざい”って言うんだよ。…ウメコ、知らない?』
もちろん、知ってる。
「…ちょっと待ってよ!なんでそんなのあたしに渡したの?」
『今がチャンスだよ。ウメコ。バンだって、ウメコのこと…』
「それよりも、どうやったらバンは治るのよ!教えなさい!」
凄い剣幕でSPライセンスに向かって怒鳴る。
『それが…わからないんだよねえ〜』
つれない返事だ。
「何よそれ!」
『ハクタクさんからわざわざ手に入れた、貴重な薬だったんだよ。そんな細かいところまで、ハクタクさん、教えてくれなかったし』
「…もういい!センさんのバカ!今度シュークリーム50個、おごってよね!」
ブチ。

―「あーあ、切れちゃった」
「なんてことしたのよ…センちゃん」(本当に呆れた。何考えてるのよ、センちゃん。)
「うーん、まあ、匙は投げられたし。ウメコからはシュークリーム50個でチャラにしてくれるみたいだから、それでいいかなあ…なんて」
「バンがこんなことして、喜んでウメコ抱くとでも、思ってるわけ?…あの子はそんな子じゃ、ない」
「…わかってるよ。…でも、大丈夫。明日になれば、わかるって。」
「…バンに恨まれても、知らないわよ」
「大丈夫だよ」
余裕綽々のセンであった。別の意味で脅威が待ち受けていることをまったく予測だにせず。―

部屋に戻ったウメコは、寝室でうずくまっているバンを見守るしか、なかった。
「バン…」
「早く、帰れって…俺のことは…いいから」
「そんなあ…」
「さっき…ちらっと…聞こえてきたぜ…あのワイン、薬か…なんかだったんだろ?
…俺は…薬のせいで…無理矢理、ウメコを、抱くなんてこと、したくないんだよ…」
かすれた声。息が荒くなって途切れ途切れ。
「バン…」
(自分ひとりだけ我慢すればいい。バンはそういう人なんだ…でも駄目、そんなの!)

「あたし…帰らない!」
「ウメコ…?」
「…バンがこんな状態のまんま、あたしだけ、ひとりで、帰れる訳・・・ないじゃない!」
そう言って、ウメコは、テーブルの上に置いてあった、薬の残りをグラスにも移さずぐびぐび飲み干してしまった。
今まで立ち入らなかった、真っ暗な、寝室に入り、ドアを閉めた。
真っ暗な部屋。端っこで座り込む、バンの前に、同じく座り込む。
バンが、顔を上げた。頭はくしゃくしゃ、目はうつろ。そして、荒い息。
ウメコはそんなバンの顔を見て。
(色っぽい…)
じんと、体の芯が熱く、感じた。
「あたし…一緒にバンの傍にいたいの。だから…何してもいいよ…」
(…あたしも薬も飲んじゃったし…覚悟はできてるもん)
そう言いながら、バンの手をほどいて、ぎゅっと、握り締めた。
「ウメコ…」
ぎゅっと手を、握り締める。”いいよ”のサイン。
「…本当に、何するか、わかんねえ…ぞ?」
「…あたし、初めてだけど…バンのためなら、どうなってもいいよ…」
にっこり笑った。

―彼は黙って頷くと、彼女に握り締められた、手をゆっくり離し、そのまま彼女を、押し倒した。
彼女の顔にそっと手を触れ、顔を近付け、
「俺の真似、すればいいから…」そう囁き、そっと口唇に触れる。
触れたと思ったら、口唇を付けたまま、舌を出し入れし始めた。
(キスってこんなものだったの?でも…なんか気持ちいい…真似しろってこのことだったんだ…)
びっくりしつつも、頭がとろりとして、そんなことは考えられなくなり。そして彼女も真似をする。
お互いに舌を出し入れし続けて。
くちゅくちゅ…舌を絡める音。「ぅん…」…喘ぐ声。
卑猥な音が真っ暗な部屋一面に広がった。

彼女は段々と、体が火照っているのを感じた。
(これって、やっぱり薬の…せいかなあ…それとも、キスだけで…感じちゃってるの?あたし・・・)
彼女は初体験ながらも、一応、性行為の知識は人並みに持っていた。
ただ、その知識を体で実践する機会が今までになかっただけ…
彼は、一旦舌の動きを止め、口唇を、離した。

「ウメコ…」そう呟くと、彼女の耳元に近づき、耳たぶを甘噛みし始める。
(いやあ…何これ…すごく気持ちいい…)
「ぁん…」
(しまった、声出しちゃった…)
何故か彼は彼女が考えてることが、わかったのか。何なのか。
「声…素直に出してもいいんだからな…」
そう言うと、再び彼は甘噛みを始めた。
彼女は今までで経験したことの無い、「快楽」に溺れ始めていた。
体の芯…一部がじん、と熱くなるのを自覚しつつも、甘噛みの快楽の前では
そんな自覚も何処かへと消えてしまった。

「いやあ…ダメ…」
そんな彼女の声を聞くと、彼はますます欲情に拍車がかかる。
それまでずっと彼女の背中にあった彼の右手は、段々と下へ下へと移動して、
彼女の太腿近くで、止まった。
甘噛みを続けながら、彼女の下着の上をまさぐり始めた。なぞり、擦り、摘む。
「…すげー、濡れてる…」
耳元で囁かれ、おまけに下半身は彼の手で侵食され。そして、薬のせいで。
目を閉じて、「快楽」そして、「彼」に身を任せて、
「…バン…」
彼の名前を呼ぶだけだった。

侵食は、まだ終わらない。片手で彼は彼女の下着を、外し始めた。
彼女は抵抗どころか、自分から足を動かし、彼に協力していた。
下半身の一部…局所が露になった。
(これが本当の、”一致協力”って、やつなのかな?)
そんなことを考えながらも、火照る体と体の一部がじわじわ熱くなるのは治まらない。
露になったせいで、ますますひどくなる一方。

突然、彼は上半身を起こして、
「…おまえだけ、脱がせるのもフェアじゃないよな…」
そう言いながら、彼は順にTシャツ、ズボン、そして、下着。
彼女は、下着しか外していないのに。彼は全部脱ぎ捨てた。

暗くて、はっきりは見えないけれど。初めて見た、彼の裸。
下半身はハプニングで何度も下着姿を見たことは、あったけれど。
「体の線…細いね…」「これでも一応鍛えてる、つもりなんだけど」そう苦笑する。
(こんな細い体で、いつも無茶ばっか、やってるんだ…)
そして、生まれて初めて、男の分身なるものをまじまじと見つめる。
大きく、反り返った彼の「分身」。
「触っても…いい?」「いいよ」
ちょん、と触ってみる。
「うっ…」
彼の初めての喘ぎ声。「分身」がぴくりと動き、先からたらりと液体が流れてきた。
(なんか…おもしろそう…)
引き続き、ちょんちょんと、まるで弄ぶように触り続けた。
その度に彼は声を出し、その声がたまらなく彼女の性欲をかき乱す。
「気持ちいいんだ…」「そんなことねーよ…」「嘘つきは、よくないよ…」
そして、また弄ぶ。彼はまた喘ぐ。それの繰り返し。
瞬く間に彼の「分身」はどんどん太くなり、液体が、じわじわと溢れ出す。
彼女はくすくすと笑いながら、楽しい反面、段々と不安になってきた。

(これが、私の「あそこ」に入るの?…痛そう…)

そんな不安を察知したかのように、彼が「分身」を指差して、言った。
「ここ…舐めてくれないか…?」
「普通、入れるんじゃないの?」彼女が聞くと。
「そんなの、いつでもいい…とりあえず、今日は舐めるだけでいいから…」
薬の効力は、彼も彼女も。いつの間にか、消えていた。
彼女は思った。
―薬をきっかけとした偽りの欲情で、達するのはしょうがないとしても、
あたしと「ひとつになる」ことだけは、彼は絶対にしたくないんだと。
正々堂々と、なんにもないところから、2人で一緒に昇り詰めたいんだと―
(そんなバンが、好き。)

「うん、わかった…寝てくれる?」
彼女は、前屈みの姿勢で、彼のそそり立つ「分身」をちろちろと舌で舐め始めた。
先を。根元を。そして、全体をつーっとなぞるように、舌を這わせる。
「うっ…」また彼が喘ぐ。
(…舌で舐めるだけじゃ…多分ダメだよね…)
「分身」を口にほおばる。大きい。小さな彼女の口には入りきらない。
喉元に、「分身」の先が当たる。口の中に納まりきらない「分身」を彼女は舌で舐めながら、
上下に自分の顔を、動かした。

「…ウメコ、ちょっと待った」
彼女は「分身」から口を外した。
「どうしたの?」
「やっぱり俺ばっか気持ちよくなるの、ずるい…一緒に気持ちよく…なろうぜ」
そう言って彼は、彼女の腰を持ち上げて。
「ひゃっ!」
さっき露にされた、彼女の局所が彼の前に。彼女は彼の上に逆さま、四つん這いの格好。
(…こ、これって、もしかしてシックスナインってやつ…?うそー…)
一応知識はある。でも、自分がこんなことを今からするのかと。
そして、自分の局所が彼の眼前にあるのを、意識すると、恥ずかしさと、すこし治まっていた、体の芯が
じわりと、熱くなってきた。

「あっ…」今度は彼女の方が喘ぐ。
彼女の局所の秘部を彼が舐めていた。
「やめて…」「やめない」
そして、また彼は舐める。自分の秘部から蜜がとろっと流れているのが、彼女にも、わかった。
その蜜をすくうかのように、彼は秘部を舐める。
「あぁ…」「気持ちいいんだろ…」
(…気持ちいいんだけど…言葉に出せない…)
彼女は、快楽に溺れそうになりながらも。
(バンも気持ちよく…してあげなきゃ…)
そう思いながら、「分身」を口にくわえ、口の中で舌を這わせたり。ちろちろと舐めたり。
自分たちがこんなに卑猥な格好をしている恥じらいもかなぐり捨てて。
ただ、一緒に気持ちよくなりたい、その一心で。
ひたすら「分身」を出来る限り、弄ぶ。そんな中でも「快楽」は治まらない。
そして、彼は彼で彼女の秘部をひたすら、舌で弄ぶ。
「…そろそろ、出そう…ウメコ、どうする…?」
口を離せと言いたげである。
(あたし、やめないよ…さっきの薬不味かったから、変わりに飲むんだもん…)
返事も出来ないので、そのまま「分身」を口にくわえたまま、弄び続けた。
「…いいのか…?」
彼は再び聞く。返事はそのまま。弄び続けるだけ。
ようやく彼も理解してくれたようで、再び、彼も彼女の秘部を舌で舐め始めた。
彼の舌の動きが急に早くなる。
一緒に気持ちよくなろう。まるでそう言いたげのよう。動きが激しくなる。

「ウッ…出、出る…」
 そして。彼は分身から、白液を出し、体を痙攣させて。
彼女はその彼の白液をゴクリ、と飲み干したあと、初めての快楽に、堕ちた―


―「チュッチュッチューアーワアワー♪チュッチュチューアーワアワー♪」
「お前、いつもそんな歌歌ってんのかよ」
「うるへー!バンよりも歌上手いんだから、ほっといてよ!」
「…(それ言われると何も言えない)…」
 
ここはデカベースの一室。バスルーム。
一つになることはできなかったものの、快楽を共にした2人は、そのままバスルームへ直行した。。
体を洗い流した後、バスタブに浸かる。

「ごめんな」「何が?」
「俺、あんなカッコ悪い姿晒しちゃってさ…。」
「いーのいーの!もう終わったこと言ったって、しょうがないよ。」
「それに…」「それに?」
「お前、あれで満足出来たか…心配でさ…」

バンは経験があると言えば、あった。
チャンベーナ星での候補生時代に、無理矢理チャンベーナ星人の女教師から、手ほどきを受けたことがあったのだった。
たった1回きり。それも、非ヒューマノイド型星人と。
だから、あんまりウメコを気持ちよくさせる自信がなかった。

「ウメはじゅーぶん、満足。バンとこんな風にお風呂に入れるなんて、さっきまで考えもつかなかったんだよ?」
「嬉しかったか?」
「うん♪」
「そっか…ならいいんだ」
ぎゅうっと、後ろから抱き付く。
「今度は、きちんとなーんにも無い状態で、一からやり直そうね。」
「ああ…しっかし、あの薬には参ったよ…ったく、センちゃんは全く油断がならねー」
「ほーんと…でも、その代わりに、シュークリーム50個もゲットできるし。」

「やっぱりセンちゃんに、感謝しなきゃいけないよなあ…ところで、シュークリーム。俺にも分けてくれるよな?」
「うん!」
「いくつ?」「うーんと、10個!」
「なんでだよー!」「ウメがセンさんから直接ゲットしたんだから、こんなところでしょ?」
「あー、なんか、ずるいぞ!ウメコ!」
「ずるくないもん!」
「ずるい!」「ずるくない!」
「「…なーんてね」」
にっこり笑い合い、こつん、と額をぶつけ合って。
「これからも、よろしくな。ウメコ」「こちらこそ、よろしくね。バン」

―ウメコとバン。とりあえず一応結ばれ一安心?公私共にこれから、ますます2人から目が離せない。頼むぞデカレンジャー。戦え、特捜戦隊デカレンジャ

ー!―

(EDコーナー)
ボス「バン!また遅刻か!…って何でウメコがいるんだ?」
ウメコ「あたしたち、朝までずーーーっと、一緒だったんです!」
ボス「…(呆然として、書類をパラリと落とす)」
ホージー「…アンビリーバボー!…なんでお前たちが…(頭が痛い)」
テツ「ナンセンス!先輩とウメコさんが結ばれるなんて、宇宙一性質が悪いカップルですよ!」
バン「なんだと後輩ー!(バックドロップの刑)」
ジャスミン「ま、人生ケセラセラ。なるようになるってことね。…あれ?センちゃんは?」

 (デカベースの廊下内)
ハクタク「センちゃーん!こないだの薬代、早く返しておくれー!結婚してくれたらチャラにするぞ〜?」
セン「確かに、お金きちんと払ったはずなのに…。違う、絶対に、違う…」

♪胸にキラリッとハードボイルド…♪

(おしまい)

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