Episode XX 『アンドロイド・レディ』

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江成仙一、通称セン。彼の久しぶりの休暇は、2日間。
2日目の夜は、クリスマス・イブ。
ウメコには「ずるーい!」と罵られ、他の皆からは「ハクタクさんとイブ過ごすんだ!」とからかわれ、
適当に笑って返すものの、
(クリスマスなんて、俺には関係ないんだよ) と思いながら、彼の休暇は始まった。
 やることと言えば、ずっと部屋に入り浸り、読書三昧。
(こういう時間もたまには必要なんだよねえ…と思ったら、もう夜…一日経つのは早いもんだな)
そう思っていた時に、ノックが聞こえてきた。
―コンコン―

(普段滅多に来客なんて来ないのに)
センはよっこらせと呟きながら、部屋の入り口へと向かい、ドアを開けると…
 其処に立っていたのは、オレンジの服。漆黒の長髪。黒くて丸い瞳。
「…フローラ?」
「セン、久シブリ…」
 目の前に立っていたのは、”宇宙の破壊王”メテウスに造られ、
マシンモンスター・ギーガスの頭脳となるはずだったアンドロイド、フローラ。
平和の為に働くということで、宇宙警察本部に送還された…はず。

「フローラ…。君、宇宙警察本部で働いていたんじゃ…」
「俺が彼女を連れてきたんですよ」
ひょいっと、フローラの後ろから出てきた白い影。
「テツ…なんで君が」
「彼女。俺が地球署に来る少し前に俺の部署にサポートとして派遣されてきたんです」
何たる偶然。
「その時は、センさんと知り合いだなんて思わなくて…それに、彼女が、
派遣されたときはほとんど会話することもなかったんです。でもこの間、本部に帰ったら…」
 ちょうど彼女が機械…いや、体の不調を訴えている最中に自分の部署に戻ったテツは、
地球署のメカニック・白鳥スワンになら治せるかもしれないとリサに提言し、それから暫くして
許可が降り、地球署に連れて帰ってきたのだと、テツはセンに経緯を話してくれた。
「これからスワンさんのところへ連れて行くので…とりあえず挨拶だけ…。また終わったら、フローラ連れてきますから」
と言って、テツはそのままフローラを連れて、メカニックルームへと向かった。
―――――――――――――――
「…テツ、アリガトウ」
「お礼なんて、ナンセンス。…君が後でセンさんに叱られるかもしれないよ…本当にあれで、よかったの?」
「イインデス、ハヤクスワンサンノ処ヘ、イキマショウ」
「…」
―――――――――――――――
 初めて出会った時、メテウスから”メリア”と呼ばれ、創造された直後で全く感情も表情もなく、”まっさら”な状態だった、彼女。
―アンドロイドにも、心はあるはずだ―
 そう信じてセンは、彼女を”フローラ”と名付けて、「笑う」ことを教えた。
 その後、ギーガスを破壊して、宇宙警察本部へと旅立ち、そのまま離れ離れになり、半年以上が経った。
(結構、元気そうにしていたみたいだけど…スワンさんに用だなんて、そんなに調子が良くないのかな…)

 センは再び本を読み始めた。…あのときと同じ「花」を押し花にしたしおりを取って。
(そういえば明日は、クリスマス・イブだったっけ…)
 クリスマスなんてイベントで、盛り上がっているのは宇宙全体を見渡しても地球署や一部の所轄ぐらいしかない。
地球生まれのセンですらそんなのどうでもいいと思っている。それこそテツの言葉を借りれば「ナンセンス」。
(でも、フローラには、”クリスマス”、教えてあげたほうがいいよな)

 次の日の朝。結局、昨日の夜フローラは、来なかった。
(スワンさんの部屋にでも、泊まったのかな)
 と思っていたら、昼過ぎ。テツが約束通りフローラを、センの部屋に連れてきてくれた。
「今日一日、フローラをお願いしますね。…俺明日本部にまた帰りますから」
「うん、わかった」
「でも…センさんに可愛い彼女がいたなんて、俺、知りませんでしたよ。ハクタ」
「テツ。そろそろデカルームに戻らなくてもいいのかな?」
遠まわしに、且つ強い声で。テツの言葉を遮った。
(…フローラの前で、ハクタクさんの話題は出したくないんだ。ごめんねテツ)
 センの意図を察したテツは、慌てて
「そ、それじゃあ後は頼みましたよ、センさん。フローラ、また…」(センさん怒らすと、怖いんだよなあ…) 
そう言って、その場を後にした。

「…さて、と。どうする?フローラ。部屋に入るかい?…それとも、外にでも行こうか?」
「センノ言ウトオリニスル」
「じゃあ、外行って、散歩しようか…ちょっと、待ってて」
慌てて部屋に戻り、隊員服に着替えると、玄関に戻り、フローラを連れて、「あの場所」を散策することにした。

「セン!アレ、懐カシイ…」
 そう言って、フローラが指差したのは、風船配りのピエロ。
…あのときは、風船配ってたピエロが、メテウスだったんだよな…。そう思いながら、ふっと気が付くとフローラが
「二ツ、クダサイ」 といつのまにかピエロに風船を譲ってもらい、それを持ってこっちに走り駈け寄ってきた。
「セン!風船、モラッテキタ…!」
 ”あの頃”よりも、彼女が眩しく見える。表情が、豊かになり、笑みも自然にこぼれる彼女。
「ハイ。センノ分モ、アルヨ」 手渡されたのは、緑の風船。
「センノ色ダネ」 そう言いながら、彼女は微笑む。
(そしたら俺は、風船の代わりに、これをあげるよ)
「はい、フローラ、どうぞ」
…ズボンのポケットからこそこそとセンが手渡したものは。

「…懐カシイ…」 一本の花。 ”あの時”。彼女に渡した花と一緒。
…ただし。今は咲いていないので、前に摘んだときに本に挟んでしおりにしてあったもの。
「アリガトウ…セン」 「いえいえ、どういたしまして」
フローラは、花をじっと見つめて、こっちを向き、センもなんとなピンときたのか、2人で同時に。
「1タス1ハ…」 「「2ッ」」
 ”アンドロイドにも、心はあるはずだ”。センは、そう言い切って、フローラにいろいろ教えていた。
(だけど、やっぱりちょっと不安だったんだ。そして今。こんな会話が自然に出来るなんて。よかった、フローラ。)

 久しぶりの地球で、少しはしゃいだフローラを気遣い、公園のベンチで休ませた。
彼女には、飲み物も、食べ物も、必要ない。ただ、休ませるだけ…。
「どうだった?久しぶりの地球の空気」
「美味シイ…センガイルカラ?」
「うーん、俺がいるから美味しいのかな?そういう問題じゃ、ないと思うんだけど…」
そう呟くと。空から降ってきたのは…
「コレ…、”雪”?」 「そう。”雪”。寒くなると、降るんだ」
「ハジメテ見タ…」 「この時期にしか、見られないからね…」
「…キレイ…」
開いた手に、雪が、降りてきた。深々とそれを見つめる彼女の顔を見て、センは愛しく思った。
「今の時期じゃないと、見られないもの、他にも、あるんだよ。」
「ホント?」 「じゃ、行こうか」
そうセンが手を差し伸べると、フローラも彼の手を手にとって。2人で歩き出した。
 いつの間にか、時間は経ち、空が夕闇に、包まれる頃。
「…さ、着いた。どう?フローラ」
彼女が見上げると、彼女の瞳に映ったのは。
街路樹で開催されている、クリスマス限定の、イルミネーション。
あたり一面広がる、きらめく光。
「スゴイ…キラキラシテイル」
「これも今日明日で、見納めなんだ…、ってこういうの、本部では見たことない?」
「…見る機会ナカッタ…」 「え?」 「ウウン、ナンデモ」
ボソッと呟いた、フローラの一言を、センは聞き逃していた。


「センガイル地球ハ、ヤッパリ綺麗デ、美シイネ」
「そうだね…こんなに綺麗なこの星を俺は守りたいんだ…」

それからしばらくしてから2人はセンの部屋に戻って、いろいろ話をしていた。

 本部に移ってからのこと…。特凶の部署でのテツの様子…。そして、センの話。
フローラは、アンドロイド。だから、食べ物も、飲み物も欲しがらない。
 前もってフローラに断ってから、1人でお茶を飲もうとしたその時。
「ソレ…何?」
「ああ…これは、お茶って言うんだ…フローラは、飲めないからわからなかったかなあ?」
「ドンナノカ、見セテ」
いいよと、フローラに手渡す前に、フローラがセンが持っていた湯呑みの前に顔を近付ける。
「コレガ、オチャ…」
センの眼前に、フローラの髪の毛が、揺れる。そして、鼻についた、彼女の名前通りそのままの”花”の香り。
(こんなにフローラに近付かれたのは、初めてだ…これが、フローラの香り…)
 センの中で熱いものがこみあげてきた。
「セン?」
フローラは湯呑みから、視線をセンのほうへ向ける。黒くて丸い。そして、真っ直ぐなフローラの、瞳。
 見つめられると、ますます熱いものが、体をぐるぐると旋回する。
―いくらフローラだからって…俺は、アンドロイドに欲情してどうするんだ?―
「セン…?」
 心配そうに見つめる彼女。彼女はそっと左手を差し出し、その手はセンの首筋をつたって、頬で止まった。
彼女の手は、アンドロイドなのに、暖かい。その暖かさを感じ取った瞬間。
 胸の鼓動が、早くなり、脈を打つのが自分でも感じ取れるくらい、興奮が高まる。
―ああ、もう、我慢出来ない!―
「フローラ…」
 彼女の左手をそっと離して、彼女を抱きしめる。
 これでもか、というくらいに。潰れそうなくらいに。…弾力があり、まるで人間のような体をしている、フローラ。
彼女は、何の抵抗も示さない。そればかりか、センの顔を覗き、こう言うではないか。
「セン。キスシテ…」


 センは、興奮から逃れようと、必死でフローラを抱きしめていたのに。
これじゃ、ますます興奮から、逃れられないじゃないかと思い、苦笑しながら。
「…フローラは、俺とキスして、どうするの?」 「…気持チヨク、ナリタイ」
(どこからそんなことを覚えてきたんだ…。まさか、特凶で、変なこと吹き込またんじゃ、ないだろうね?)
「でも、フローラは、そういうこと出来ないはずじゃ…」 「ソンナコト、デキル」 「え?」
「昨日、スワンサンノトコロヘ、頼ミニ行ッタ…セント一緒ニナレルヨウナ、カラダニ、シテクダサイッテ…」
「嘘だろ…?」
―――――――――――――――
 そのころ、マシンルームでは。
 「…フローラが、来ているそうだな」
 「あの子、本部に行った直後からたまに私に手紙をよこしてくれていてね…」
 これ、と何通かの手紙をドギーに見せながら。
 「”センのことが忘れられなくて、すごく苦しい”って。そう何度も手紙には、書かれてた…最後に来た手紙、読む?ドゥギー」
 「ああ…」
 ドギーは、”最後に来た手紙”をスワンから手渡され、その手紙の一部始終を読んで、手紙を力いっぱい、握り締めた。
 「…そんなにセンのことが…」
 「多分。あの子はずっとセンちゃんのことを想い続けていたのね…」
 「それにしても、そんな”改造”なんて、できるのか?」
 「…1回きりなら。それ以上は、今の科学力じゃ無理。それに…」
 「それに?」
 「いくら、アンドロイドとはいえ、改造なんかして、その次に故障とか起きたら…二度と元には戻らない」
 「何だって…?」
 「特にフローラの場合、造りが精巧で素晴らしい…だけど、その分、デリケートなのよ…
おまけにメテウスオリジナルの『規格外』。私にできることは、”改造”することまで…」
 「それをわかってて、その話を受けたのか…?」 「ええ」
 「フローラが、死ぬかもしれないんだぞ…?」
 「…ごめんなさい。でも、私も本当は、断るつもりだったの…昨日、あの子がここに来るまでは」
 「スワン…」
 「あの子に直接会って、あの子の真剣な、眼差しの向こうに眠る苦しみが…伝わってきたのよ…」
 ドギーはそれ以上、何も言わなかった。
 「どうか、何事もなく、事が終わることを、祈るしかないわ…」


―――――――――――――――
「本当に、スワンさんが、改造してくれたのか…」
 彼女は、ふっと視線を横へやり、すっと、立ち上がる。
「見テ…私ノカラダ…」
彼女は、自分が着ていたオレンジ色の服を、ゆっくりと脱ぎ捨てる。
「…それは…」 「…見タ目モ、変エテモラッタ…」
本当に、アンドロイドなのか?と聞きたくなるくらい…美しい…
 最初のフローラに出会った頃。少女の姿を形どったアンドロイドね、とスワンさんが呟いたのを思い出す。
その面影は、今はもう、ない。
 少女から、大人へと変貌を遂げる真っ只中の、未成熟、且つ美しい、肢体。
フローラが服を脱ぐまで、センは気がつかなかった…。

「ダカラ、好キナダケ…抱イテ」 「フローラは、まだ早いよ」
フローラにも、そして、セン自身にも、咎めるように。
「ソンナコト…ナイ」
フローラは、座って、自分の右手をセンの股へと近付ける。
「…駄目だ…」
 既にそそり立っているセンの男根を、服の上から触り始める。しかも、手付きが…初めてとは、思えない。
頭では拒否しよう、拒否しようとしているセンの意識をあっさりと、かき消す。
(そんなこと、何処で覚えたんだ…俺はそんなこと、教えていないのに)

―本部に行ってから、「そういう知識」を、彼女なりに、インプットしたのか?―

「うっ…」 「セン、気持チイイ?」
「そんな…こと、ない…ああっ…!」
口で拒否もできない。そのままセンは力を失って、フローラに押し倒される形になった。
 「ワタシ…センノタメナラ、ナンデモスル…」
そう言いながら、彼女は、センの陰茎を摩りながら、片方の手で、センの腰のベルトを外し、ズボンを脱ぎにかかる。
「フローラ…駄目だ…っ」 「デモ、セン、気持チイイハズ…見テ」 「…やめろっ…」
 気持ちとは裏腹に、膨張しているセンの、肉棒…


「セン、感ジテイル…モット、キモチヨク、シテアゲル…」
 センの肉棒をいきなり直に握り締め、上下を擦る、フローラ。
…出会った頃とのフローラとは、違う姿。…まるで娼婦のよう… 
センの肉棒は、ますます膨張するばかり。
「やめ…うっ…あああ…っ…」
「セン…、素敵…」
 今度はペロペロと、肉棒を舐めにかかる。
もう、駄目だ… 薄らいでいく、理性。その中で見たものは、「恍惚」という表情を浮かべる、フローラ。
―そんな表情もできるのか―

途中で、フローラは、愛撫を止めた。これでもう終わるのかと思ったら。
「センモ、脱イデ…」 「…まだ、続くの?」
「今度ハ、センガ、気持チヨク、サセテ…」 「…わかったよ」
 そう言うとセンは、下はフローラに脱がされていたから、上着だけを脱ぎ捨てて。彼女を抱きしめる。
 そっと彼女の唇に触れて。舌を彼女の口の中に入れる。彼女も、同じようにセンの口の中に舌を出し入れしてきた。
「ンッ…」
たった一つの喘ぎ声で。
(フローラの体の中には、性感センサーでも付いているのか?…だとしたら。スワンさん、侮れない…)
(知識を吸収すると、フローラの頭脳の中で解釈されて、いざそういう場面になると対処できるようになっているのかな)
 センの疑問は広がっていくばかり。
しかし、センの予想していた以上に、彼女の舌の動きは、淫ら。
 アンドロイドには未必要な、睡液も溢れ。これもスワンさんに、付けてもらったのか?と考えるが、
 ”卑猥な音”。そして、口からはみ出して、垂れる、2人の混ざり合った、”唾液”。
この2つで、センはそんな疑問も忘れてしまいそうになる。
そんな中、フローラの体からほんの少し異常音が流れたが、フローラは何も言わなかった。
そして、センも…知っててもう、何も言わなかった…

 いつの間にか、フローラのペースに乗せられている自分がいることに、気が付く。
舌の動きも巧みだが、それよりも、わざと卑猥な音を出そうとしているのは、フローラ。
 センはフローラの顔から唇を離すと、そっと言った。
「何もしなくていい…俺が、気持ちよく…してあげるから」

 それだけ言うと、また再び唇に触れて。舌を出し入れ、そしてフローラの、口の中を攻め尽す。
 フローラの顔を、ちらっと覗く。
 目を閉じて、センのされるが侭。
しかし、さっき演じていた”娼婦”よりも、自然体。そして、至福で一杯の顔。
 そのまま、センは唇に触れたまま、フローラの背中に回していた手を離し、彼女の胸を触り始めた。
(暖かい…) 
 本当に人間と言っていいくらい、暖かく、柔らかく、滑らかな、肌。
センはそんな肌から突出している、乳房をまるで汚すようにわしづかみにして、揉み始める。
「ぅあん…」
(そんな声を聞くと、余計に、この声を聞きたくなるんだよね)
 一度火が付いた性欲は、なかなか消えない。今此処にいるのは、人間ではない少女の胸をまさぐり、快楽に溺れた男。

 フローラを、静かに床に寝かせた。
 センの唇は、彼女の白い柔肌を通り抜け、乳房へと辿り着くと、思いっきり、吸い付く。
「ああん…セン…」
 乳房への愛撫はそのままで、一方の手をそろそろと、フローラの腹部から、下半身へと辿り着いた。
指で一瞬触れただけで、すぐにわかった。
「…感じてるんだ、フローラ」 「そんなこと、ない」
「なら、どうしてこんなにグショグショなの?」
そう言ってセンはフローラの入り口を弄び始める。最初は入り口周辺を。
「いや…やめて…」 「なんで?…俺に抱かれたく、ないの?」
そう言うと、蕾をこじあけ、直にちょん、と触る。
「いやあああっ…」
 何度も何度も繰り返す。その度に上げる声。そして、入り口から、流れてくる、フローラの…水。
センの愛撫に素直に反応する。
(出会った頃のフローラには、こんな機能はついていなかった。…これは…凄い…)
スワンの科学力に、尊敬の念を持ち始め、同時に、何処まで”人間と”一緒なのか調べてみたくなる。
 胸の愛撫を辞めて、センは顔を、フローラの下半身に向ける。
「セン…?」
「すごいね…フローラ…見ただけでグショグショだって、わかるよ…拭いてあげる」
 そう言うと、舌を這わせ、ぬちゃぬちゃと濡れた入り口を舌で拭き取る。
しかし、拭き取るどころか、フローラの入り口からはますます水が溢れ、拭いても拭いても、止まらない。

 クチュクチュ、ヌチャヌチャ…
 水とセンの舌が混ざり合い、卑猥な音を出す。
「ああ…セン、気持ち…いい…ああっ…」
 フローラもそう答える。
(多分フローラは俺にこうされるだけで、感じてはいないけど、幸せなんだ…きっと)
そして更に、弄ぶ。足を真っ直ぐにした状態では、耐えられないのか、フローラは膝を曲げ、
「いやあ…んっ」

 ここまで快感を忠実に再現できる科学力を持ったスワン。
 そして、ここまで忠実に、反応を再現する、フローラ。

声も体の、反応も、何もかも。普通の女性とは何ら変わりはない…
「綺麗だよ、フローラ…」
 入り口への刺激を辞めて、センは再び、フローラの顔を見つめる。
はあはあと、荒い息。目は虚ろ。そして。
「セン…」
 自分を呼び続ける、声。
(これもプログラミングされたものかもしれない。でも、そんなのもうどうでもいいんだ)
 センの肉棒は、放置されたままだったが、それでもしっかりと膨張はしている。
息、瞳、声。それだけでもセンにとっては十分な、刺激。でも…
(それでも、体も、心も。フローラに、捧げるよ)

「…入れて、いい?」
 フローラは、黙ってこくりと、頷く。
センは腰を上げて自分の肉棒を、フローラの入り口に当てる。
そして、再び身をかがめ、フローラの耳元に、囁く。
「…フローラ…」
 そう言うと、思いっきり、”自分”を”フローラ”へ侵入させる。
「いやぁああ…痛い…」
 処女膜を破られるという感知を受けたのか。”痛い”という言葉まで、出るようにしたのか。
(…スワンさんには、負けたよ…)
「もうちょっと、我慢してたら、すぐ…楽になるから」

 改めてスワンの科学力に脱帽。そして、改めて、腰を上下に動かす。
フローラは、センの腰の動きに合わせるかのように
「はぁ…いやぁん…セン…っ」
淫らな声を出し続ける、フローラ。その束の間。
先に肉棒を弄ばれてたセンが、我慢できなくなり、とうとう、
「駄目だっ…っ…イクっ…」 「出して……」 「…うぁぁぁ…っ…!!」
「セン…!」
 センはフローラの中にそのまま、自分の精を放出した。

 一旦置いて、センは呼吸を落ち着かせながら、むくりと起き上がり、
隣の部屋から、白い毛布を持ってきて、彼女の肩に、被せてあげた。
「セン」 「…風邪、引くから…着ていなよ」
「セン…ありが」
突然、フローラの体から、異常な音が。
 
―バリバリバリッ―

「うっ…」
フローラが、呻き声を上げて、倒れた。
「フローラ!…熱っ!」
センが触ろうとすると、電流が周りに流れているらしく、触るに触れない。
「フローラ!」 「セン…」
 しかし、苦しみはすれど、なぜか彼女の表情は、変わらない。センはすごく気になった。とは言ってもこのままじゃ…。
「どうすれば、いいんだ…」
マシンルームにも運べないし…スワンさん、呼ぶしかないか…SPライセンスを、通信モードに変えて。
「スワンさん」
『センちゃん…』
「フローラが…。フローラが…大変なこ」
「わたし、大丈夫です」

 後ろから、突然声がした。振り向くと、毛布にくるまったままのフローラが、立っていた。
荒い息はしているものの、さっきまでの電流はもう流れていないようだ。
『フローラ?…よかった…もう、それで、”終わった”の?』
(”終わった”?)
「”終わった”って、何ですかそれ…」
『!…センちゃん』
「スワンさん、まだ、何か隠してませんか?」
『…』
SPライセンスの向こう側は、無言。
「スワンさん!」
『わかった…本当のこと、話すわ… 何処まで知っているのか、教えて。』
「フローラから、さっき、スワンさんに頼んで、”改造”してもらったと。…それだけしか、聞いてないです」
『…今度、本当に壊れるようなことがあったら、もうフローラは、私にも治せないの…』
「何ですって…」
『フローラは、メテウスの完全オリジナルアンドロイドタイプって言ったら、わかるわね?」
「…”規格外”って、奴ですか」
『当の製作人だった、メテウスももういないし、彼女の構造を完全に知るものは誰一人いない。
その上で改造を行って、途中で動かなくなったとしたら…』
「スワンさんじゃ、無理なんですね…」
『…ごめんなさい…』
「…」
『フローラを、責めないであげてね。…センちゃん…ごめんね…』

そのままぷつりと通信は、途絶えた。
 
―――――――――――――――

「私、センちゃんに嫌われちゃうわね…」
「そんなことないさ…センならきっと、わかってくれるさ…。俺はあいつを信じてる」
「…そうだといいんだけど…」

―――――――――――――――

(俺はさっき、彼女を殺そうとしてたって、ことか)
 彼女から誘惑されたからと言っても、結局彼女の誘いに応じてしまったのだから。
フローラを、座らせて、センは聞く。
「なんで…自分の命を無駄にしてまで、俺に抱かれたんだ…」 
「センのこと、愛してるから」
センは、呆然とした。
「フローラ…さっきの話、聞いていただろ?…君は二度と動かなくなってしまうんだよ…無茶して…」
「そんなのどうでもよかった。本当はさっき、あのまま逝ってしまえば…よかった」
「駄目だ!…せっかく、本部で、働いているって言うのに…命を無駄にしたら、いけない」
「命なんて、どうでもいい…帰るくらいなら…死んだ方が…まし」
「…!?」 
 彼女の目に光る、涙。

”哀しくても、泣けない。アンドロイドは、涙を流せない”と、あの時別れ際に呟いた彼女。
(これも、スワンさんの、手によるものなのか?)
「私は、センの傍に、いたかった… 本部で働くなんて、本当は嫌だった。…私は、所詮、アンドロイドだからと
覚悟していたけど、やっぱり本部の人達は…」
(だからさっきの痛みで、あんなに幸せそうな顔をしていたのか…)
――――――――――――――― 
「アンドロイドの普及は、全宇宙に広がっているものの、彼らに対する視線・そして評価は、
実績より遥かに低いと聞くが…まさか宇宙警察でもそういう風潮だったとは…」
「地球で言うと、”ロボット”みたいなものね…壊れたら、捨てられ、そしてまた新しい
アンドロイドを購入する。そんな日常が当たり前…マーフィーは、幸せな方なのよ…」
クーンと鳴きながら、スワン自作の犬型ロボット、マーフィーK9がスワンに近づいてきた。マーフィーの頭を撫でる。
「…フローラも、その例外ではなかったってことか」
「残念だけど…。テツやリサが地球署に来なかったら、フローラを地球署に連れて帰ることすら、無理だったはずよ」
「たった1度きりの、チャンスってことか。…俺たちには、そういう権限なんて、殆どないからな…」
――――――――――――――― 

 テツとフローラが接触した時期もあったというが、案の定、その頃のテツは地球生まれでありながら、
”地球署は辺境の星”と決め付けにかかっていて、おまけに、他の本部の人間同様、エリート意識に
凝り固まっていたらしく、殆どフローラと話す事はなかったという。
 せいぜい用件を話す程度。テツの地球署派遣、そしてリサが地球に訪れなかったら、
フローラを地球に連れてくるということは、「たかがアンドロイド如き」と言われ、却下されていただろう。
 フローラの地球訪問は、たった3日間。
”機械のメンテナンス”という理由があるものの、今回限りということで、訪問が許可されたと言う。
 結局1ヶ月かかって、許可が降り、その直後、フローラは心無い人にこう言われたという。

『お前の代わりなんて、いくらでもいるんだからな』

 フローラの他に、本部で働いているアンドロイドは多数いたが、フローラみたいに事務処理系統の仕事を
任される者もいれば、本部に勤めている一部の人間の”性の道具”として利用されているアンドロイドがいるのも、
フローラは知っていた。
 そして、フローラ以外のアンドロイドたちは、何一つ、文句も言わずに、だ言われるがまま、動くのみ。
(自分は、何か違う)

「私、明日本部に、帰らなきゃいけない…、多分地球に来ることは、無理。…だから、抱いてほしかったの…」
「そんな馬鹿なこと言って…君の命の保証が、ないっていうのに…」
「じゃあ、私を地球署に、働けるように、してくれるの?ずっと、センの傍にいられるように、してくれるの?
…そんなの、リサチーフでも、無理だったのに…」 「…」
 センは、そんなフローラの処遇をまったく知らなかった。
 アンドロイドに対する話は、噂では聞いてはいただろうに、それどころか、フローラのことすら、
仕事に追われて、すっかり忘れていたのだ。
(フローラは、もう”人間”だからと、俺は勝手に決め付けていたんだ。
 ”俺が、ここまでフローラを、成長させてあげたんだ” そんな驕りで、結局一番辛い思いを
していたのは、フローラだったのに。それにも気付かなかった、俺は…なんて愚かなんだ…。)
 センの体中を流れる”無力感”。そして、いつのまにか頬をつたう涙。止まらない。 

「セン…泣いてる?」 「泣いてないよ…」
「でも、涙、流してる…」 「…目にゴミが、入っただけだよ」
涙を隠すために、フローラを、見え透いた嘘を言った。
「俺、何も知らなかった…ごめんね、フローラ…」
「いいの。センは”地球”をずっと守るお仕事、してたんだから…私、きちんとセンがどういう仕事してたのか、
知ってた…気付かないのは当たり前…私は、そんなセンが、好きなの…」

―ここまで俺を一途に想ってくれる、アンドロイド・ガール…もう、アンドロイドじゃない。立派な人間だ…―
たまらなく、フローラが愛しい。
「君の事が好き…」 「私も…」
抱きしめていた手を緩め。お互いに顔を合わせ。
「地球の恋人たちってこうやって、クリスマスになると、愛を育むんだよ」
なんて気障なことを呟きながら、軽いキスをする。

―抱擁、そして長い長い接吻―

 その時。そこから現実に引き戻すような音が聞こえてきた。
センの耳に聞こえたのはフローラの首元から聞こえる、微かな電子音。
まるでパソコンの起動音にも似ている、きゅいーんという音。
 それと同時に、フローラの様子もおかしくなる。体が、冷たくなって来たのだ。
「…フローラ!」
電子音は段々大きくなるばかり。
「私…もう、駄目かな…」 「何言ってるんだ…今からスワンさんのところに…」
「もう故障は、始まっている。故障はスワンさんには、直せないってさっきも言った…」
「…」
「セン」 「…何だい?」
「私、地球に来れて、よかった…。センのいる地球、大好き…これからも、地球を守って…お願い…」
「わかったよ…だからもう、何も言うんじゃない…」 「愛し…てる」
あんなに煩かった電子音がいきなり、止まった。
「フローラ」 目は閉じて、動かない。体も、冷え切っている。
「…フローラ?」 何度呼んでも、答えない。そして、冷え切った体から、一粒の涙がこぼれた。触ってみると…ほんのり暖かい…
「フローラ!」 センはその場で、ただ、彼女を抱きしめるだけだった。

――――――――――――――― 
それから、1時間後。
マシンルームで2人の行く末を心配していた、ドゥギーとスワン。
自動ドアの音が響く。慌ててドアの方に駆け寄る2人。

そこに立っていたのは、毛布にくるまれたフローラを横抱きしている、セン。
「…センちゃん」 「セン…」
「フローラ…息を引き取りました…」 「センちゃん…」
センはその場でうつむきながら、続けて話す。
「俺なんかに出会わなければ…っ」
 初めて、2人の前で、むせび泣く、セン。
誰も彼を責めるわけがないのに。彼は自分のせいだと信じてやまない。泣く声だけがマシンルームに広がる。

「センちゃん…彼女の、体、貸して頂戴…」 「スワン?何する気だ…」
「駄目もとでも、やってみるわ…修理…」 「スワンさん…」
その日、彼女は朝までマシンルームに缶詰めだった。もちろん、センも、ドゥギーも…

――――――――――――――― 
 次の日の朝。
「いってきます。今日は遅くなるから…クリスマスだっていうのにね…」
「…」
相手は何も答えない。答えないというか、答えられないのだ。
「あ、そうそうこれ…君に返しておくよ…スワンさん宛てに手紙、送っていたんだってね?その中に…
あの花の押し花が、入っててね…」
 相手は差し出された押し花を、言われるがまま、受け取る。断るとかそういうモノを、持ち合わせていないのだ。…まだ…
 あれから、スワンは徹夜を返上して、フローラの修理に取り掛かった。
なんとか、動いたものの…フローラの頭脳を司っていた、1枚の小さなチップに破損があり、
今までフローラが覚えていたことがすべて”消えて”しまった。
 そのチップがこれからも、上手く作動するかは検討もつかず、これから、前のフローラのようにひとつずつ覚えていくのか。
それとも、覚えられないのか。それは誰にもわからない。

 センはこう言って、フローラを連れて自分の部屋に、戻った。
「生きてるのなら…そして、まだやりなおしがきくのなら…また、最初から頑張ればいいんです」
 そして、一夜…というか一睡した今。センの部屋には、彼女がいる。
もっとも、感情も知識も、なにもない”まっさら”な状態。

「俺、まだ教えてなかったこと、たくさんあるんだよ…だから、これから、俺がいろいろ、教えてあげるよ」

 そう言って、彼は部屋を出た。

(終)

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